所在不明株主への対応策について
こんにちは、いつも「事業承継の窓口」ブログをお読みいただき誠にありがとうございます。ハッピー事業承継コンサルタント兼事業承継士にもと社長です。今回は、株主と連絡が取れない場良いの具体的なステップをお知らせします。この問題も事業承継の時によく問題になるので、この大変さを知って頂き、社長が早めに対応する事をお勧めします。
所在不明株主とは
所在不明株主とは、株主としての権利を持ちながらも、会社からの連絡や配当金が5年以上届かず、会社との接触が途絶えてしまった株主を指します。この問題は、特に事業承継を考える際に大きな障害となり得ます。例えば、過去に信頼関係のもとで株を持ってもらっていたものの、現在は疎遠になってしまったケースや、退職した元社員の所在が不明になってしまうケース、さらには株主が亡くなった後に相続人が現れず、株式の所在が不明になることもあります。このような所在不明株主の存在は、会社の健全な運営やスムーズな事業承継に影響を及ぼすため、適切な対応が必要です。
所在不明株主への対応ステップ
以下の4つの方法で所在不明株主への対応が行われます。手続きは少し複雑ですが、それぞれの手順をさらに深く掘り下げて説明します。
A) 所在不明株主の探索と交渉
1. 詳細な情報収集の重要性
探索にあたって、社長や関係者がどれだけ記憶を辿って情報を集めるかが鍵となります。長年の付き合いや関係者からの小さな情報も手がかりとなるため、可能な限り多くの情報を引き出す努力が必要です。ネット検索では、SNSや旧住所の近隣情報も調査対象に含め、様々な角度からの調査が求められます。こうした手間を惜しまないことで、所在不明株主にたどり着ける可能性が高まります。
2. 法的書類の取得と活用
住民票や戸籍謄本の取得ができる場合、さらに正確な所在地情報が確認できます。住民票取得の際には、法的根拠を示すために必要な手続きや証拠を整えておくと、スムーズに情報収集が進みます。また、必要に応じて司法書士などの専門家に依頼することで、調査が円滑に進むケースも多く、確実に株主の所在を確認するための道筋を作れます。調査の結果、所在が判明した場合には、株式の譲渡に向けた交渉が円滑に進むよう準備しておくことが重要です。
3. 交渉における配慮
発見した株主に対しては、単に株式を買い取るだけではなく、過去の関係性に配慮した説明が大切です。相手の信頼を得ながら交渉を進めることで、協力を得やすくなります。例えば、過去に協力してもらったことへの感謝を示し、現在の事業の状況や承継の重要性を丁寧に伝えることで、円滑な譲渡が進む可能性が高まります。相手が譲渡に積極的な場合、速やかに手続きを行うことが望ましいでしょう。場合によっては、少額の対価を支払うことで譲渡が円滑に進むケースも多く、事前の準備と相手の心理を考慮した対応が重要です。
B) 裁判所の手続きを通じた強制買収
1. 株主総会通知の発送と保管
所在不明株主の発見がどうしても難しい場合、裁判所を通じて株式を強制的に買い取る手段を検討します。まず、株主総会の招集通知を所在不明株主の住所へ5年以上にわたり送付し、その間に返送された証拠を全て「配達証明付き郵便」で保管することが重要です。このようにして、株主に対して適切な通知が行われていると法的に認められる状況を作り出すのです。
2. 裁判所の手続きによる許可の申請
5年以上通知が届かない状況が続いた場合、会社は裁判所に対して「株式売却の許可」を申請できます。この手続きを行う際には、専門の弁護士や司法書士に相談することをおすすめします。裁判所が許可を出すことで、会社は所在不明株主の株式を売却できるようになります。
3. 株価鑑定書の提出
上場企業と異なり、非上場企業の株式には市場価格がないため、鑑定書を提出し、株式の価値を裁判所に認めてもらう必要があります。株価鑑定書は専門の鑑定機関で作成され、会社の財務状況などを基に評価が行われます。これにより、法的に認められた株価で買い取りが可能となり、事業承継の障害を解消できます。鑑定書を用意する際には、会社の資産や将来の収益性も考慮されるため、確かな準備が求められます。
C) 株式併合によるスクイーズアウト
1. 株式併合手続きの準備
株式併合を実施する際には、株主総会での承認が必要ですが、所在不明株主には通知が届かない場合、裁判所の判断を仰いで株式併合を実施します。併合後、株主の数が一定数以下になると、強制的に株式の買い取りを進める手段が適用されます。
2. スクイーズアウトの実施
株式併合を行い、株主の数が少数派となった段階で、所在不明株主への代金を供託し、会社が株式を取得する流れになります。この方法は迅速で、事業承継を急ぎたい場合に有効です。手続きが完了した後は、供託所へ代金を支払った証明を提出し、会社名簿から株主を削除することが可能となります。
3. 対応期間の短縮の重要性
この方法を取る場合、裁判所での手続きや株式併合の手順を踏むため、計画的に進めることが求められます。特に事業承継を早期に進めたい場合、事前に法律専門家へ相談し、各段階での効率的な進行方法を考えることが大切です。併合によっても完全な解決には時間を要するため、事前準備とプロのサポートを活用するのが望ましいでしょう。
D) キャッシュアウト制度の活用
1. 少数株主の確認と権利の確認
キャッシュアウト制度は、少数株主がいる際に会社が株式を買い取る方法で、特に所在不明株主が少数である場合に有効です。まず、所在不明株主が持つ株式が全体の中で少数であることを確認し、キャッシュアウトの実施を計画します。
2. 手続きの流れと供託による回収
所在不明株主に連絡が取れない場合、株式の対価を供託することで、会社が株式を強制的に回収できる流れとなります。この方法は、迅速に処理が進むため、事業承継に時間的な制約がある経営者にとっては利便性が高い選択肢となります。
3. 会社名簿からの削除と権利の消失
供託が完了すると、所在不明株主の権利は消失し、会社名簿から削除されます。これにより、経営上の不安要素が排除され、次世代にバトンを渡す準備が整います。キャッシュアウト制度を利用する際も、専門家の
サポートがあれば安心して手続きを進められます。制度を活用した上での確実な名義変更が会社の未来を支えます。
【特別措置】経営承継円滑化法での短縮措置
2021年に改正された「経営承継円滑化法」により、代表者の高齢や健康不安により事業承継が急務である場合、所在不明株主の処理期間を「5年」から「1年」に短縮することが可能です。この特例措置は、急を要する事業承継を検討する経営者にとって非常に有効であり、スピーディな事業承継が実現できます。
まとめ
所在不明株主は、特に事業承継の際に大きな障害となる可能性があります。しかし、専門的な知識と適切な手続きを活用すれば、こうした問題も解決できます。事業承継をスムーズに進めるためには、早期に準備し、必要に応じてコンサルタントに相談することで、会社の将来をより確かなものにすることが可能です。もし所在不明株主がいる場合、ぜひ専門家のサポートを受け、会社を次世代へと導く一歩を踏み出してみてください。
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