株主に相続が発生した場合の株式承継は、問題だらけ

事業承継は未来へのチャンス!「株主に相続が発生した場合の対応」を前向きに考えよう

こんにちは、HAPPY事業承継コンサルタントの西尾です。今回は、事業承継の重要な側面の一つ、「株主に相続が発生した場合の株式の承継」について考えてみましょう。とくに株式の相続が発生するときには、事前の備えが大切です。このブログでは、事業承継を「将来の発展と成長に向けたチャンス」として捉え、必要な対策を分かりやすくお伝えします。これを機に「安心して経営を続ける準備」について一緒に考え、前向きにステップを踏んでいきましょう。

事業承継の基礎知識:株式譲渡制限で安心感を!

まず、事業承継の中で株式がどのように取り扱われるのか基本的なルールから説明します。多くの会社の定款(ていかん)には、以下のような株式の譲渡に関する条文が入っています。

  • 取締役会がある会社の場合:「当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を受けなければならない。」
  • 取締役会がない会社の場合:「当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を受けなければならない。」

このように、自由に株式が売買されることを防ぐことで、会社が思わぬ乗っ取りに遭うリスクを減らし、安心して経営に専念できるようになっています。しかし、この条文だけでは対応しきれない例外的なケースが存在します。それが「株主が亡くなった場合の相続」です。

なぜ相続に注意が必要なのか?

相続が発生すると、事業に関係のない親族が株式を保有する可能性があります。このような場合、親族が経営の方針に賛同してくれるとは限りませんし、相続人が突然「株を買い取ってほしい」と要求してくる可能性もあります。このような状況になると、買い取り資金を用意しなければならず、会社の資金計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。会社を引継いだ時には、ただでさえ多額の資金が必要なのに、予想外の資金が必要となると後継者は、大変な思いをすることになる。

事例:ある社長の体験談

ある中小企業の社長が急に亡くなったとき、会社の株式がご親族に相続されました。その親族は、会社のことをあまり知らず、「いずれ現金化したい」と思っており、後日「株式を買い取ってほしい」と依頼してきました。会社は、その時、急な資金準備が難しく、結果として銀行からの融資を余儀なくされました。この事例からもわかるように、相続対策をしないままだと経営が不安定になるリスクが潜んでいるのです。これを考えても社長が元気なうちに株式の分散を是正する必要があります。

「相続時の売渡請求権」という防止策

そこで、こうしたトラブルを防ぐための対策として、「相続時の売渡請求権」を定款に加えておくことが有効です。会社法第174条に基づき、この権利を持っておくと、株主が亡くなり相続が発生した際に、会社がその相続人に対して株式を買い取るよう請求できるようになります。

定款への記載例

(相続人等に対する株主の売渡請求)
第〇条 当会社は相続、その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を売り渡すことを請求することができる。

売渡請求を行う際の注意点

では、この「売渡請求権」を実際に行使する際のポイントをいくつか見ていきましょう。

1. 請求期限

売渡請求は、相続があったと知った日から1年以内に行う必要があります。この請求には、株主総会の特別決議を経ることも必須です。こうした期限を定めておくことで、後から手続きが複雑化するのを防ぐ効果もあります。

株主総会の特別決議とは?

株式シェアを2/3以上持っていると株主総会の特別決議を単独で成立させられる。特別決議とは、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の2/3以上にあたる多数をもって行う決議を指す。
よって残り1/3の議決権を持っている株主が反対するため、全員出席したとしても、すべての議決権の2/3以上を保有していれば決議できる。したがって、経営者は自分、あるいは自分の身内と合わせて2/3以上を確保して行く。ように指導すべきだ。
なるべくならば、社長単独で2/3以上が望ましい。子供や妻が結託してクーデター起こす場合もありうる。

2. 売買価格の決定

株式の価格は、会社と相続人との間で協議して決めますが、もし協議が成立しない場合には裁判所で価格を決定してもらうことも可能です。この場合、売買請求の日から20日以内に申し立てを行うことが必要です。

3. 財源規制

会社が株式を買い取る場合、
1)純資産が300万円未満の場合は、株式を買い取ることができない。

2)分配可能額が不足している場合(会社法461条2項)株式を買い取ることができない。
・分配可能額は純資産のうち、資本金、資本準備金、利益準備金など株主への分配に用いられない金額を控除してもあまりある場合には、その範囲で買い取れる。

3)資金の準備が難しいときには、保険の解約や借り入れで対応する方法もありますが、会社の健全な経営に支障が出ないよう慎重に検討が必要です。

相続対策を前向きに考えるメリット

「相続対策は少し面倒で難しそう」と思われるかもしれませんが、しっかりと対策を取っておけば、いざというときに会社の安定が保たれます。事業承継対策をしっかり整えることは、未来への投資であり、次世代に自信を持って事業を引き継ぐための準備でもあるのです。

もう一つの事例:事前に対策を取った社長のケース

ある製造業の社長は、早い段階から相続時の売渡請求権を定款に取り入れ、さらには保険商品も活用していました。その結果、実際に相続が発生したときにも株式の買取がスムーズに進み、取引先との関係も変わらず、経営は平常どおり継続できました。このように、事前の対策が結果的に会社の信頼と安定に貢献したのです。

一歩踏み出してみませんか?

事業承継の対策を考えることは、未来の成長を見据えた「前向きな行動」です。事業承継士に相談することで、プロの視点から自社の課題と対策を明確にし、安心して次の世代にバトンタッチするための準備を進めることができます。早めに取り組むほど、自由に計画が立てやすく、予期しないリスクにも冷静に対応できるようになるのです。

ぜひこの機会に、事業承継に関するご相談をご検討ください。一緒に、会社の未来に向けた前向きな一歩を踏み出しましょう。

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