事業承継時における不動産法人化プランとは?
事業承継時における不動産法人化プランとは?
こんにちはHAPPY事業承継コンサルタントの西尾です。いつも「事業承継の窓口」のブログをお読みいただき誠にありがとうございます。今回、紹介する事業承継時における不動産法人化プランとは、会社や個人が所有している不動産を法人名義にすることで、事業承継をスムーズに進めるための方法です。このプランは、特に相続税や事業承継の際の資金面での負担を軽減するために非常に効果的です。この記事では、不動産法人化の基本的な仕組みとそのメリット、デメリット、そしてどのように活用するのが最適かをわかりやすく説明していきます。
不動産法人化の基本的な仕組み
「不動産法人化」とは、オーナーが個人で持っている不動産を法人に移転し、その不動産を会社として管理・運用することを指します。法人に移転することで、相続や事業承継時に様々なメリットが生まれ、経営者や後継者の負担を大幅に軽減することができます。
たとえば、不動産を法人化することで、不動産自体を直接相続するのではなく、不動産を持つ法人の「株式」を相続する形に変わるため、相続税を減らすことができる場合があります。また、法人の経費として不動産の管理費や修繕費を計上することで、税金の負担を減らし、管理が効率化されるという利点もあります。
不動産法人化のメリット
1. 相続税対策
不動産を個人で所有している場合、相続の際に不動産自体の評価額が高くなるため、相続税が大きな負担となることがあります。不動産法人化を行うことで、その不動産は法人が所有する形となり、相続するのは不動産ではなく法人の「株式」となります。この株式の評価額は、不動産の評価額よりも低くなることが一般的なので、相続税を大幅に軽減できるのです。
例えば、オーナー経営者Aさんは、複数の不動産を個人名義で所有していましたが、相続税対策としてこれらの不動産を法人に移転しました。これにより、相続時の評価額が低く抑えられ、相続税の負担が大幅に軽減されました。
2. 所得分散効果
不動産を法人化すると、その不動産からの収益(賃貸収入など)は法人の所得として計上されます。これにより、オーナー個人の所得税の負担を抑えることができます。個人の高い税率を避け、法人としての税率で所得を処理することで、税負担が軽減されます。
また、法人は不動産にかかる管理費や修繕費を経費として計上できるため、税金の負担をさらに抑えることが可能です。
保田(仮名)さんは、個人で賃貸物件を複数所有していましたが、所得税の負担が大きくなってきたため、法人化を検討しました。法人化後、賃貸収入は法人所得として計上され、個人での税負担が減り、修繕費などの管理コストも法人の経費として扱えるようになりました。
3. 事業承継の円滑化
不動産そのものを相続する場合、不動産の名義変更や借入金の引き継ぎなど、複雑な手続きが伴いますが、不動産を法人化している場合は、株式を相続するだけで済むため、事業承継の手続きが大幅に簡略化されます。これにより、後継者にとっても負担が少なくなります。
ある企業のオーナーCさんは、個人名義で持っていた自社のビルを法人化し、事業承継の際には法人の株式を相続させる形にしました。これにより、不動産の名義変更や借入金の引き継ぎなど、手続きが複雑になることを防ぎ、スムーズに事業承継が進みました。
4. 不動産管理の効率化
不動産を法人化することで、法人としての信用を活用し、融資を受けやすくすることができます。また、法人の経費で修繕費や管理費を処理することで、不動産管理にかかる手間やコストを軽減できます。法人として管理することで、より効率的な運営が可能となり、長期的な資産管理がしやすくなります。
賃貸マンションを所有する河野さん(仮名:東京)は、法人化によって不動産管理を法人名義に切り替えました。法人化することで修繕費や管理費を経費として計上でき、税務上も有利な状況となり、追加融資を受けることで物件の拡張やリノベーションも可能となりました。
5. 資産の分離によるリスク軽減
法人に不動産を移転することで、個人の資産と法人の資産を明確に分離できます。これにより、会社が抱える経営リスク(たとえば倒産など)が個人の資産に直接影響を与えることがなくなります。また、個人の事情(例えば離婚や破産など)が法人に影響を与えるリスクも軽減されます。
Eさんは、自社が経営不振に陥り負債を抱えていましたが、事前に自宅を法人名義にしていたため、個人資産への影響を抑え、会社整理の際も個人の生活が守られました。
不動産法人化のデメリットと注意点
一方、不動産法人化には注意すべきデメリットも存在します。
1. 法人設立・維持コスト
法人化には設立時のコスト(登記費用や司法書士の手数料など)がかかります。また、法人を維持するためには、定期的な会計処理や税務申告が必要となり、会計士や税理士に依頼するコストも発生します。これらの費用が継続的にかかることを理解しておく必要があります。
2. 法人税の課税
法人が利益を出した場合、その利益に対して法人税が課されます。個人で所有している場合は、所得税のみが課されますが、法人化すると法人税に加え、配当を受け取った場合に個人がさらに所得税を負担するという二重課税の可能性があります。ただし、法人税率は所得税率よりも低いことが多く、全体の税負担は軽減される場合が多いです。
3. 不動産移転コスト
不動産を法人に移転する際、売買や贈与による移転には不動産取得税や登録免許税、譲渡所得税が発生します。これらの税金が予想以上に高額になることもあるため、事前に十分にシミュレーションを行い、移転コストを考慮しておくことが大切です。
不動産法人化が効果的なケース
不動産法人化が特に効果的なケースは、次のような状況です。
- 複数の不動産を所有している場合
複数の不動産を所有していて賃貸収入が大きい場合、法人化することで所得税の負担が軽減されます。また、不動産管理が法人経費として計上できるため、税負担が軽くなるというメリットもあります。 - 相続税対策が必要な場合
高額な不動産を個人で所有している場合、相続時に発生する相続税が非常に大きな負担となることがあります。不動産を法人化しておくことで、相続税の負担を減らし、後継者にとっての資産管理がスムーズになります。 - スムーズな事業承継を目指す場合
不動産を含む事業を後継者に相続する際、法人化しておくことで株式の移転だけで済むため、手続きがシンプルになります。これにより、後継者の負担を軽減し、経営に専念できる環境が整います。
不動産法人化を進めるための手順
不動産法人化を進める際は、専門家のサポートを受けることが重要です。事業承継士「事業承継の窓口」税理士や弁護士、事業承継士に相談し、最適なプランを設計して進めることが推奨されます。
- 法人設立の準備
法人を新しく設立するか、既存の会社に不動産を移転する形で法人化します。まずは、登記や必要な書類の準備を進めます。 - 不動産の移転手続き
不動産を法人に移転する際、売買や贈与、出資などの方法を検討します。税負担を考慮し、最適な移転方法を選ぶことが重要です。 - 法人運営の開始
法人化が完了したら、不動産管理や会計処理を法人として行います。適切な税務申告を行い、法人としての運営を安定させます。
結論
不動産法人化プランは、事業承継をスムーズに進め、相続税や財務の負担を軽減するための強力な手段です。不動産を多く所有している企業や、将来の事業承継を考えている経営者にとっては、非常に効果的な選択肢となります。専門家の助言を受けながら、計画的に進めることで、会社の未来を安定したものにすることができます。
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