事業承継7つのステップ
いつも「事業承継の窓口」の事業承継ブログをお読みいただき誠にありがとうございます。事業承継は、会社の未来を決定づける重要なプロセスです。このブログでは、事業承継を円滑に進めるために必要な7つのステップを紹介します。
1. 代表取締役の交代(登記簿謄本への記載変更)
事業承継の第一歩は、会社の代表取締役の交代です。法的な手続きとして、会社の登記簿謄本に新しい代表者を記載する必要があります。これを行うことで、後継者が正式に代表取締役としての役割を担うことができるようになります。
この手続きは、法務局で行いますが、社内での決議が先行します。株主総会での承認が必要な場合や、取締役会の決議で進められる場合など、会社の形態によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
登記手続きが完了すると、会社の代表者が法的に変更され、外部との契約や交渉でも新しい代表取締役が責任を持って対応できるようになります。
2. 金融機関の連帯保証の移行(できれば連帯保証のない形)
会社の借入金や融資契約には、通常、代表取締役が連帯保証人として署名している場合があります。これを後継者に引き継ぐことも、事業承継の重要な一環です。しかし、連帯保証を後継者にそのまま引き継ぐと、後継者の個人資産がリスクに晒されることになるため、可能であれば連帯保証を外すことが望ましいです。
金融機関との交渉が必要ですが、会社の財務状況が健全であることや、事業の安定性を示すことで、連帯保証を不要にできるケースもあります。仮に保証が残る場合でも、保証の範囲を縮小したり、リスクを分散するための選択肢を検討します。
連帯保証が適切に移行または解消されることで、後継者の経営に対する不安を軽減し、安心して事業を引き継ぐことができます。
第3者が事業承継する場合は、この連帯保証が解除されず奥さんの同意が得られず事業承継を断念するというケースもあります。
金融庁からも「事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則の公表について(金融庁HPより)
が発表されていますが、まだまだ利用しずらいのが実情です。但し、これからの事業承継を考えた場合、金融機関に堂々と主張する事も大切だと思います。
3. 自社株式の移転・名義変更・買収完了(少なくとも2/3以上が後継者へ)
事業承継の過程で最も重要な要素の一つが、会社の所有権を後継者に移転することです。このためには、自社株式の移転が不可欠となります。株式の移転方法には、贈与、売買、相続などさまざまな選択肢がありますが、後継者が経営権を安定的に行使できるようにするため、少なくとも2/3以上の株式を移転することが一般的です。2/3以上の株式を保有することで、重要な会社の意思決定に関する議決権を確保でき、経営のコントロールが安定します。
ここでポイントになるのが、事業承継税制と事業承継円滑化法です。これらは、株式の移転に伴う税負担を軽減し、事業承継を円滑に進めるために整備された法律や制度です。
事業承継税制の活用
事業承継を行う際、株式の移転にかかる税金(特に贈与税や相続税)が大きな負担となることがあります。そこで、事業承継税制を利用することで、これらの税金の納税猶予や免除を受けることが可能です。この制度は、一定の要件を満たすことで、後継者が経営を引き継いだ際に大きな負担を背負わずに済むように設計されています。
要件の例:
- 後継者が贈与または相続で取得した株式を一定期間保有すること。
- 会社が中小企業者に該当し、承継後も事業を継続すること。
この制度を利用すれば、株式移転に伴う税負担を軽減できるため、後継者がスムーズに会社を運営するための資金を確保でき、安定した経営を行うことが可能です。
事業承継円滑化法の意義
さらに、事業承継円滑化法は、事業承継時の様々なトラブルや負担を軽減するために設けられた法律です。この法律は、主に以下の3つの側面から事業承継をサポートします。
- 遺留分に関する特例制度
通常、相続時には遺留分を巡るトラブルが発生することがあります。事業承継円滑化法では、この遺留分に関する特例を利用することで、後継者が株式の大部分を取得する場合でも、他の相続人とのトラブルを防ぐための法的措置が講じられています。これにより、経営権を安定的に後継者に集中させることが可能です。 - 金融機関との連携
事業承継円滑化法に基づく支援策の一つとして、金融機関との協力体制が整備されています。これにより、承継時の資金調達や運転資金の確保が容易になります。特に、後継者が株式を買い取る場合の資金問題をクリアしやすくする制度が設けられています。 - 税制上の支援措置
この法律の枠内で、税制上の支援措置が強化されており、後継者に過度な税負担をかけないよう配慮されています。例えば、事業承継税制の適用要件が満たされていない場合でも、別の形での税負担軽減策が講じられます。
株式移転の実行方法と専門家の重要性
株式の移転手続きには、税務だけでなく法的な手続きも伴います。特に、株式の名義変更や株式譲渡の契約手続きは、適切な法的サポートが必要です。これを怠ると、後にトラブルが発生する可能性があります。そのため、事業承継士「事業ん窓口」、弁護士や税理士などの専門家と相談しながら進めることが非常に重要です。
また、一般的には、後継者が2/3以上の株式を保有することで、会社の経営において強力な議決権を持つことができるため、後継者が主体的に会社の経営を行える体制が整います。事業の窓口は100%の株式の取得が大切だと考え対策を打ちます。理由は、株主に反対勢力が残る事で経営の不安定さが残る事を徹底的に排除するためです。
ポイント:
- 株式移転の際に、贈与税や相続税に配慮した税金対策が必要。
- 事業承継税制や事業承継円滑化法を活用し、負担を軽減。
- 専門家のサポートを受けながら、適切に株式の移転・譲渡を行う。
株式の移転は、事業承継を成功させるために不可欠なステップです。しかし、株式移転には税務や法務の問題が絡むため、専門家と連携して慎重に進めることが必要です。事業承継税制や事業承継円滑化法を活用することで、負担を最小限に抑えながら、後継者が経営権をしっかりと引き継げる体制を整えることができます。これにより、後継者が自信を持って会社を運営し、さらなる成長へと導くことが可能です。
4. 従業員への説明と承認
従業員に対して新しい代表取締役の就任を説明し、理解と承認を得ることは、事業承継の円滑化に欠かせません。従業員は、会社の内部で日々働いているため、代表者の交代がどのように会社に影響を与えるのかについて敏感です。
新しい代表取締役がどのような方針で会社を運営するのか、従業員に対して明確に伝えることで、彼らの不安を取り除くことができます。例えば、後継者のビジョンや今後の会社の方向性について具体的に説明し、従業員が安心して業務に専念できる環境を整えることが大切です。
特に、長年会社に尽力してきた従業員にとって、突然の変化は戸惑いを招くこともあります。新しい代表者が現場に足を運び、従業員一人一人と対話し、信頼関係を築くことが重要です。
従業員への説明時には、従業員向け新社長お披露目パーティーを開催し、前社長から後継社長(新社長)に従業員の目線を向ける必要があります。これも次期社長への代替わりが、この日をもって行われた。と認識させる為に非常に重要なステップです。
5. 代表交代パーティーの実施
代表取締役の交代は会社にとって大きな節目であり、それを記念するパーティーを開催することで、社内外の関係者に新しい体制を正式にお披露目することができます。代表交代パーティーは、従業員や取引先、金融機関など多くの関係者を招待し、先代社長の今までの貢献を称える事から始め、次は後継者の決意や今後の方針を直接伝える場として活用できます。パーティーは、一度で多くの関係者に対して世代替わりをお伝えする良い機会となります。
このようなイベントを行うことで、後継者が正式に会社のリーダーとして認められ、社内外の支持を得ることができます。また、パーティーを通じて先代社長が感謝の意を示すことも、これまで会社を支えてきた人々との信頼関係を強化する大きな要素となります。
6. 取引先・金融機関への挨拶回りと承認
取引先や金融機関は、会社の重要なパートナーです。代表者の交代を伝えるだけでなく、新しい代表取締役が直接挨拶に回ることで、信頼関係を築き直すことができます。特に、金融機関に対しては、事業の安定性や今後のビジョンを明確に伝えることで、資金繰りの円滑化や融資条件の改善などのメリットが期待できます。
取引先には、後継者がこれまで通り取引を継続すること、さらには新たなビジネス展開の可能性についても提案することが有効です。これにより、後継者が単に経営を引き継ぐだけでなく、さらに発展させる意欲を示すことができ、取引先の信頼を確固たるものにします。
挨拶回りをしっかりと行うことで、関係者に安心感を与え、事業承継後もこれまで通りの協力体制を維持できる環境を整えることができます。
*「事業承継の窓口」では、後継者となり、次期社長になることが決まった場合、必ず少額でもいいので。次期社長の名前で金融機関から借入をするように指導しています。理由は、事業承継で新社長が変わったからと言って、金融機関との取引経験のない新社長が借り入れをすぐに起こすことは難しい場合が、よくあります。後継者は、後継者の名前で借入を社長交代の以前から行い、金融機関との取引実績を積む必要があります。ここら辺の実務の実態を教える方が少ないように思います。
7. 役員退職金の支給(代表取締役交代後の役職と報酬額の決定)
代表取締役が退任する際には、役員退職金を支給することが一般的です。これに加え、退任後の役職と報酬額を決定する必要があります。例えば、前代表が会長職として会社に関与し続ける場合や、完全に引退して次の世代に全てを任せる場合など、退任後の役割を明確にすることが重要です。出来れば、顧問や会長等、取締役から離れてもらうのが大切です。
退職金の額や今後の報酬は、会社の財務状況に基づいて慎重に決定されるべきです。退任後は、出来るだけサポート役に徹してもらい、経営に口を出すことは避けてもらいましょう。前社長にこのような事を言う事は非常に心苦しいと思います。このような時に事業承継士が第3者として前社長にお話しさせていただきます。報酬は払いますが、経営に口出ししないを原則にするのがいいかと思います。
結論:事業承継は未来への投資
事業承継は、単に会社を次の世代に引き渡すだけではなく、新たな未来を切り開くための重要なプロセスです。これらのステップを踏むことで、会社はより強固な基盤を築き、さらなる成長を目指すことができます。社長は、次の代へ会社を預かった方です。次の世代に会社を引継ぐことが社長の役割と考えて頂くことが事業承継の肝となります。
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事業承継の窓口では、皆さんの事業承継の質問にお答えしています。
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