名義株式に関する贈与税のリスクとその解決策
こんにちは、株式会社アップオンコンサルティングの事業承継コンサルタント・跡継ぎ発掘コンサルタントの西尾です。
前回に引きつづき名義株式の対応方法についてです。
名義株式の問題を解決しようとする際に、特に気をつけるべきなのが贈与税です。名義株式を実際の株主に名義変更しようとした場合、税務上「贈与」とみなされることがあり、予期しない高額な税金が発生する可能性があります。これが、贈与税のリスクです。この税負担は、会社や経営者個人にとって非常に大きな財政的な負担となることがあり、解決には慎重な対応が求められます。今回は、この贈与税のリスクをどのようにして回避するか、その具体的な解決策について深堀りしていきます。
贈与税のリスクとは?
名義株式が長年にわたって放置され、本来の株主でない他人が、名義株主として登録されている場合、その名義を変更しようとすると、税務署がこの変更を「贈与」とみなすことがあります。
*名義株式とは、本来の株主とは異なる人の名義で株式が登録されている状態のことです。例えば、会社を設立する際に、発起人が7人必要だった時代には、経営者が知人や友人に名義を貸してもらう形で会社を立ち上げるケースが多くありました。その後、名義変更が行われないまま長年放置されているため、この「名義株式」の状態が続いている企業が少なくありません。
日本の税法において、無償で財産を譲渡することは贈与に該当し、その際には贈与税が課されます。名義株式を実際の株主に変更すると、税務署はこの行為を無償での財産移転と見なし、結果的に贈与税が発生するリスクがあります。株式の評価額に基づいて課税額が計算されるため、株式の価値が高いほど、課税額も大きくなり、会社や経営者に予想以上の負担を強いる可能性があるのです。
贈与税リスクの解決策
贈与税のリスクを回避するためには、慎重な計画と適切な手続きが不可欠です。以下に、贈与税のリスクを最小限に抑えるための具体的な解決策を紹介します。これらの解決策を実行すれば、会社の将来に向けて安心して名義株式の整理が進められます。但し、法律は日々刻刻と変更しますので、必ず専門家に確認ください。(責任は持てません)
1. 税務署に事前確認を行う
最も基本的なステップとして、名義株式の名義変更を行う前に、必ず税務署に事前確認を行うことが大切です。名義変更が贈与に該当するかどうか、またそのリスクについて税務署に相談し、事前に正確な情報を得ておくことは、予期しない贈与税の課税を防ぐための最も有効な手段です。稀に、税務署がその行為を「贈与に該当しない」と判断してくれる場合もあります。名義変更がどのように扱われるかは、具体的な状況によって異なるため、正確な情報を元に行動することが重要です。
また、税務署に相談する際には、過去の株式取得の経緯や取引の記録を持参し、事実に基づいた説明を行うことがポイントです。専門家と一緒に税務署へ対応を依頼することで、より確実な判断を得られるでしょう。
2. 株主記録の遡及的修正
次に検討すべきは、過去に遡って株主名簿の記録を修正することです。これは、株式が名義株主に発行された当時の状況を正確に確認し、その上で株主名簿を遡及的に修正する手法です。名義株式の状態が長期間放置されていた場合でも、株式の実質的な所有者が誰であったかを正確に証明できれば、贈与と見なされることを避けられる可能性があります。
たとえば、名義株主が実際には株式を取得しただけで、経営に関わっていなかった場合、その証拠を揃えることで、名義株主の存在をあくまで形式的なものであると証明できます。例えば、名義株主に配当などが行われていないなどが証明の一部になる事もあります。これにより、名義変更が贈与として扱われるリスクを軽減できます。このプロセスには、過去の契約書や振込記録など、明確な証拠が重要になりますので、慎重な準備が求められます。
3. 少額ずつ名義変更を行う
贈与税を避けるための一つの有効な手段として、少額ずつ株式を贈与するという方法もあります。日本の税法では、年間110万円までの贈与は非課税枠の範囲内とされているため、毎年この限度内で少しずつ名義変更を行うことが可能です。
この方法は、特に時間に余裕がある場合には有効です。長期間にわたり少額ずつ株式を贈与することで、贈与税を抑えながら、最終的にすべての名義株式を実質的な株主に移転することができます。このアプローチを取ることで、一度に多額の税負担を避けることが可能ですが、実行には計画性が必要であり、長期的な視点での対応が求められます。ただし、この贈与は、税務署に指摘を受けない様に、専門家(事業承継士・税理士・弁護士など)に確認の上行う様にしてください。親族内では利用可能ですが、親族外では使いにくい可能性が大きいです。
4. 相続税との比較検討
名義株式の問題を解決する際に、贈与税と相続税のバランスを考えることも重要です。贈与税は名義変更の際に発生しますが、相続税は相続が発生した場合に適用されます。場合によっては、贈与税よりも相続税の方が有利になることもあります。特に、会社が家族経営であり、株式が相続対象となる場合には、相続税の特例や控除を活用することで、税負担を軽減できる可能性があります。
相続税には、例えば「事業承継円滑化法」など、家族間での事業承継に対する優遇措置が存在します。この制度を活用することで、株式の移転が円滑に進む場合があります。税負担を軽減しながら株式を後継者に引き継ぐ方法を検討するためにも、相続税と贈与税の両方を比較し、どちらが有利かを慎重に判断することが必要です。専門家のアドバイスを仰ぎ、最適なプランを立てましょう。
5. 専門家との連携は不可欠
贈与税のリスクを最小限に抑えるためには、税務の専門家である事業承継士・税理士・弁護士などとの密な連携が不可欠です。贈与税や相続税の計算方法は複雑であり、法的な手続きも慎重に進める必要があります。適切な計画を立てずに名義変更を行うと、予期しない税負担が発生し、会社や経営者個人にとって大きな財政的ダメージをもたらす可能性があります。
税務の専門家と協力することで、リスクをしっかりと管理し、最適な手続きを進めることができます。特に、名義株式の問題が複雑化している場合は、専門家の助言を受けることが解決への近道です。彼らの経験と知識を活用することで、会社の将来に向けた最良の選択をすることができるでしょう。
まとめ:贈与税リスクを回避し、安心して名義株式問題を解決しましょう
名義株式の解消に際して、贈与税のリスクは確かに存在します。しかし、事前の準備や適切な対策を講じることで、そのリスクを最小限抑えることが可能です。税務署への事前確認や株主名簿の遡及的修正、少額ずつの贈与、相続税とのバランスを考えたプランニングなど、いくつかの方法を駆使することで、贈与税の負担を軽減しながら名義株式を整理することができます。但し、専門家からのアドバイスを頂くことが前提です。
贈与税リスクを回避して、会社の経営基盤を強化するための第一歩を踏み出しましょう。専門家のサポートを受け、計画的かつ確実に名義株式の問題を解決することで、会社の未来をより明るくすることができます。
次回のブログは、
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