「前向きな事業承継で未来を作る!暦年贈与を活用した10年計画のすすめ」

いつも事業承継の窓口のブロブをお読みいただき誠にありがとうございます。ハッピー事業承継コンサルタント兼事業承継士のもと社長です。今回は「暦年贈与」を利用した事業承継について一緒に考えていきましょう。事業承継と聞くと「難しそう」「税金がかかりそう」といったイメージがあるかもしれませんが、実は前向きな対策を取ることで、会社にとっても経営者ご自身にとってもプラスになる方法があるのです。今回は「暦年贈与」を中心に、社長が事業承継を前向きに考え、安定して次の世代に会社をバトンタッチできる方法をお伝えしていきます。


1. 暦年贈与って何?まずは基礎知識から

「暦年贈与(れきねんぞうよ)」とは、毎年一定の金額を贈与することで相続税対策を進める方法です。通常、贈与には税金がかかりますが、年間で110万円以下の金額なら「基礎控除」によって非課税になります。つまり、毎年少しずつ会社の資産(株式など)を後継者に渡していけば、贈与税を支払わずに済むのです。

暦年贈与の基本ステップと仕組み

たとえば、社長が毎年110万円分の株式を後継者に贈与すると、10年間で1,100万円分の資産を非課税で渡せることになります。これは、小さな一歩ずつですが、積み重ねることで大きな額の資産を無税で移転でき、事業承継の準備としてとても効果的です。少額を定期的に贈与するため、急な税負担がなく、会社全体の資産を安定させながら承継が進められるのも大きなメリットです。

このように、長期的に見た場合、少しずつ株式を渡していくことで、税金の負担を避けつつスムーズに後継者へ会社の権利を移行できます。さらに、毎年贈与することで、後継者にも会社のことを少しずつ学ばせたり、経営者としての心構えを身につけてもらうための「準備期間」を確保することができるため、事業承継のステップとしても理想的です。

暦年贈与の注意点:税務上のリスク

しかし、暦年贈与には注意点もあります。それは「税務否認」のリスクです。税務署は、暦年贈与を「形だけの贈与」と見なす可能性があるため、しっかりと手続きや運用を行わないと否認されることがあるのです。

例えば、贈与は行われたものの後継者(受け取った側)がその資産を実質的に管理していなかったり、実際には親族がそのまま使っていたりすると、「名義預金」などと判断されてしまうことがあります。この場合、後継者が実際に株式や資産を受け取ったと証明されなければならず、証明ができないと税務否認につながり、追加で多額の税金が発生するリスクもあるのです。

暦年贈与を適切に行うためには、実際に後継者が贈与された株式を自分で管理し、受け取った資産についても後継者の口座にきちんと入金されるようにしましょう。贈与の際は、贈与契約書を交わしたり、贈与が実際に発生した年や金額を正確に記録するなど、形だけではない「実質的な贈与」を証明できる書類を残しておくと安心です。

暦年贈与の利点

改めて、暦年贈与の利点をまとめてみましょう。暦年贈与を利用することで、毎年非課税で後継者に財産を渡せるだけでなく、会社の資産を無理なく徐々に後継者へ移転することができます。また、株式の所有権を少しずつ後継者へ渡すことで、後継者の会社に対する意識や関与を深めていけるのも大きなメリットです。

さらに、長期間かけて計画的に承継を進めることで、後継者が無理なく経営者として成長していく準備ができるだけでなく、将来の税負担の平準化も実現できます。事業承継を進めながらも、会社の安定運営が可能になる「コツコツ型の対策」として、ぜひ取り入れていきましょう。


2. 暦年贈与を活用した10年計画の立て方

では、年商5億円以下の社長が、暦年贈与を活用して事業承継の10年計画を立てるには、どのように進めれば良いでしょうか?具体的な手順を解説します。このステップを参考に、実際に計画を立ててみてください。

ステップ1:事業承継のゴール設定

まず、暦年贈与で最終的にどれくらいの株式を後継者に移したいかのゴールを定めましょう。たとえば、10年後に会社の株式の50%を後継者に譲渡して経営を任せるといった目標を設定します。

  • 株式保有率の目標設定:10年後に50%、または40%など、後継者が安定的に経営に参加できる株式割合を設定します。
  • 会社のビジョンを共有:後継者にどんな経営者に成長してほしいか、将来どのような会社にしたいかを話し合っておくことも、10年計画のスタートとして重要です。

ステップ2:毎年の贈与計画を作成

年間の贈与額を110万円以内に抑えることで非課税にできます。年間110万円はあくまで目安ですので、計画を柔軟に作成しても良いでしょう。たとえば、特定の年には多めに贈与しても問題ありません(*1)。ここで、具体的に金額と株式保有率の目標を年ごとに表にして「見える化」するのが良いでしょう。

(*1)「特定の年には多めに贈与しても問題ありません」というのは、必要に応じて110万円の基礎控除枠を超えて贈与することも考慮できるという意味です。ただし、この場合、基礎控除を超えた分には贈与税がかかるため、慎重に計画する必要があります。

たとえば、以下のような場合にはあえて多めに贈与することが検討されることがあります:

  1. 株式評価額が上がる前に多く贈与する場合
     会社が成長して株式の評価額が上がる前に、多めに株式を移転しておくことで、贈与税の負担を軽減できることがあります。これは、後々評価額が上がるよりも、あらかじめ株式の低評価時にまとめて贈与したほうが税額の負担を抑えられる可能性があるからです。
  2. 後継者の経営関与が増えるタイミング
     後継者が会社の中で一定の役割を果たし始めた場合や、経営の中核を担うタイミングで株式保有率を高めておくことで、経営権や発言力を強め、実践的な経営体制をサポートする狙いがあります。このようなタイミングで、通常の110万円枠を超えた贈与も検討されることがあります。
  3. 相続時精算課税制度を併用する場合
     相続時精算課税制度を併用すると、贈与額が110万円を超えても、累計で最大2,500万円までは税負担を抑えて贈与が可能です。この制度を使うことで、基礎控除を超えた贈与を行い、相続時に贈与分を加算する形で課税を調整できます。

このように、贈与する金額やタイミングを会社の状況や後継者の成長に合わせて柔軟に設定することで、全体の承継計画がより効果的になります。ただし、贈与税の負担が増えるリスクもあるため、具体的な金額やタイミングについては弊社や税理士に相談しながら決定するのがベストです。

贈与スケジュール例

年度贈与額(株式の評価額)後継者の株式保有率(累積)
1年目110万円5%
3年目110万円10%
5年目220万円(少し多めに)20%
7年目110万円25%
10年目330万円(計画最終年)50%

このような形で「見える化」することで、10年の計画を進めやすくなります。また、毎年の計画を見直すことが簡単になるため、状況の変化にも柔軟に対応できます。

ステップ3:毎年の進捗を確認・調整

10年間の長期計画ですから、会社の経営状況や株式の評価額、また後継者の成長具合に合わせて進捗を確認し、柔軟に調整することがポイントです。毎年のタイミングで贈与が適切に行われているかを見直し、計画にズレが生じないようにします。

  • 経営状況の確認:計画当初と現在の会社の財務状況に変化があれば、贈与額や株式の評価額も見直しが必要です。
  • 株式評価のチェック:株式の価値は毎年変動するため、評価額が110万円を超える年には贈与額を調整する必要があります。
  • 後継者との意思疎通:後継者の成長に合わせ、経営の指導や事業の理解度も確認し、必要なサポートを続けます。

このように、計画を進めながらも状況に応じて柔軟に見直しを行うことで、10年後にはスムーズな事業承継が実現します。


3. 他にもある!事業承継に役立つ節税対策

暦年贈与は確かに効果的な方法ですが、他にもお得な税金対策がいくつかあります。以下の方法も併せて検討することで、よりスムーズに、そして節税しながら事業承継を進めることができるでしょう。

方法1:相続時精算課税制度を活用

「相続時精算課税制度」は、贈与時に一度贈与税を支払い、相続時に相続税を精算する制度です。年間110万円の基礎控除を超える贈与も可能で、生前贈与の金額を一度に増やしたい場合に便利です。この制度を活用すれば、暦年贈与よりも多くの資産を早い段階で後継者に渡せます。

方法2:事業承継税制

中小企業の事業承継に特化した「事業承継税制」も非常に便利です。この制度では、事前に計画を作成し、一定の条件を満たすことで、株式の贈与や相続にかかる税金を猶予してもらえます。後継者がしっかり会社を引き継ぎ続ける限り、最終的には相続税が免除される仕組みになっているため、長期的な事業承継を考えている社長にはぴったりです。

方法3:生命保険の活用

生命保険も事業承継において有効な手段です。社長の生命保険を使って後継者が税金を支払うため

の資金を確保することができ、万一の場合でも資金が不足せずに会社が継続しやすくなります。生前から計画をしておくことで、相続時にまとまった資金を残すことができるので、後継者が資金面で困らないように準備することが可能です。


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